相続と不動産
1 不動産相続について
相続が発生したときに特に問題となりやすいのが,遺産の中に不動産がある場合です。不動産は価値が高く,現金と異なり分け方が色々考えられるので,分割が難しい財産であるといえます。
2 遺産分割の流れ
相続が発生すると,まずは相続人間で話し合いをした上で,誰がどの財産を取得するのかを決めることになりますが(民法第907条第1項),ここで話がまとまらなかった場合には,次のステップとして家庭裁判所に調停を申し立てることになります。
調停は裁判所という機関をとおした手続ではありますので,当事者だけで話をするよりも比較的協議が調うことが多いのですが,基本的には話し合いですので当然話がまとまらないということもあります。そのようになった場合には,審判という裁判官が遺産分割方法について決定を出すことになります。
3 不動産の分割方法
ここで,不動産が遺産の場合に,どのように分割されるのかを説明しますと,方法としては3つのものが挙げられます。それは,①現物分割(不動産を物理的に分割する方法),②代償分割(特定の相続人が不動産を取得して,他の相続人に代償金を支払う方法),そして③換価分割(不動産を売却して,売却代金を分割する方法)です。換価分割は,さらに相続人全員の合意で売却する方法と競売により売却する方法に分けることができます。
相続人間の話し合いでも,調停でも基本的には相続人間で話がまとまれば,上記のいずれの分割方法をとることができますが,それでも話がまとまらなければ最終的には裁判官の審判により分割方法が決められることになります。
裁判官の思考過程としては,現物分割→代償分割→換価分割(審判では競売)の順で分割方法の検討が行われますので,場合によっては競売が命じられる可能性があります。
競売は,不動産を取得したい相続人にとっても,売却したいと思っている相続人にとってもあまり良い分割方法とはいえません。なぜなら,競売になると,取得したい相続人からしてみれば,その不動産に対する権利を手放さざるを得なくなりますし,一方で売却したい相続人からすると不動産業者が判断する価値よりも6~7割くらい低額になってしまい取得金額が減ってしまうことになるからです。
調停になると,自分の希望を最大限かなえる落としどころを見極めつつ,話し合いに臨む必要がありますので,遅くともこのタイミングで弁護士に相談したり,場合によってはご依頼されたりするのをおすすめ致します。