財産分与と遺産分割の違いについて
皆様からのご相談をお聞きしていますと,時々「財産分与」という言葉と「遺産分割」という言葉を混同しておられる方がいらっしゃるように感じておりますので,この機会に一度ご説明差し上げたいと思います。
簡単に言えば,夫婦が離婚するときに夫婦共有財産を分けるのが「財産分与」であり,被相続人がお亡くなりになり,相続が発生したときに被相続人の財産(遺産)を分けるのが「遺産分割」です。
より具体的な例をお示ししますと,ご主人と離婚を決めた奥様がご主人名義の預貯金を分けてもらうのが「財産分与」であり,ご主人が亡くなった後,ご主人の預貯金を子どもたちを分けるのが「遺産分割」です。
このように財産を分けるという意味では似ている制度なのですが,離婚と相続で場面が全く異なることをお分かりいただけるのではないかと思います。
もっとも,財産分与と遺産分割が密接に関連することもあります。
それは次のような例です。
離婚をするときに夫婦共有財産を分けるのが「財産分与」であることは先ほど申し上げた通りですが,財産分与の話し合いをする中で,夫婦の一方が有している財産の中に親から相続した遺産が含まれている場合があります。
この場合に,相手方が親から相続した遺産も夫婦共有財産であると主張して財産分与を求めてくるケースがあります。
しかし,親から相続した遺産は特有財産(夫婦の一方が名実ともに単独で有する財産)なので,原則として財産分与の対象にはなりません。
但し,特有財産であるかどうかが当事者間で争いになった場合に立証責任を負うのは特有財産と主張する方になりますので,遺産分割協議書をきっちり作成するなどして夫婦共有財産と特有財産を区別できるようにしておくことが大切です。