遺言を確実に実行してほしい~自分の意向に添った遺産分割~
Q 遺言を確実に実現してほしい
A 遺言執行者を指定するとよいでしょう。
遺言を確実に実現するための制度として、遺言執行者の指定があります。
遺言執行者は、遺言者に代わって遺言の内容を実現するために必要な事務処理を行う者で、遺言等によって指定することができます。
遺言執行者が指定されている場合、
①相続人の相続財産に対する管理処分権限が制限される結果、相続人が勝手に相続財産を処分することが防止され、また、
②遺言執行者が相続人全員の代表として手続するため、大幅な手間が省略されます。
相談に至る経緯・事案の概要
Aさんは、生前、弁護士Xと相談して公正証書遺言を作成し、その遺言でXを遺言執行者として指定していました。
そして、平成25年2月21日、Aさんはお亡くなりになりました。
Aさんには、Aさんの死亡時、配偶者であるBさんと子であるCさん、Dさん、Eさんがいました。また、財産としては、自宅の土地建物と300万円程度の現金、300万円程度の預金があり、遺言では、自宅の土地建物をCさんに、現金をBさんに、預金をDさんとEさんにそれぞれ150万円ずつ遺贈するとしていました。
具体的手続
まず、Xは、戸籍等の調査により、Aさんの相続人がBCDEさんであることを確認し、相続人であるBCDEさんに遺言執行事務通知書を送りました。
また、Aさんから聴いていた財産内容を基に、相続財産の財産目録を作成し、平成25年3月2日、BCDEさんに交付すると共に、遺言の執行を妨げる処分は無効になる旨を連絡しました。
次に、遺言では自宅の土地建物をCに相続させることとなっていたので、平成25年3月8日、AさんからCさんの名義に変更する登記手続を行いました。
現金については、Xは生前のAから現金の入った金庫の暗証番号を聴いていたので、平成25年3月10日、金庫を解錠して、現金をBさんに交付しました。
預金については、銀行の説得を試み、平成25年3月11日、預金契約の解除・払戻しを受け、それぞれDさんとEさんに分配しました。
最後に、Xは、平成25年3月25日、遺言執行事務終了通知兼事務報告書をBCDEさんに対して送付し、遺言執行事務を終えました。
結果
以上の事例では、Aさんの死亡からおよそ1か月でAさんの遺言が実現されました。相続人の相続財産に対する処分権限を制限し、遺言の執行を遺言執行者に委ねることによって、迅速な遺言の実現を達成することができました。
当該事件にかかった時間及び弁護士費用 |
H25年2月21日 Aさん逝去 H25年3月 8日 AさんからCさんへ登記の名義変更 H25年3月11日 預金解約、払い戻し。 DさんEさんへ分配。 合計 約1ヶ月 |
遺言執行 32万4,000円 + 遺言評価額の1.08%
仮に、Aさんが遺言書に「遺贈する」ではなく、「相続させる」と書いていた場合、不動産・預金等に関する権利は当然に相続人に承継される結果、遺言執行者の権限が大幅に制限され、この事例のように迅速に遺言を実現することはできませんでした。
このように、遺言と遺言執行者は連続したところがありますので、遺言と遺言執行者に関する相談は、同じ弁護士にセットでご相談した方がよいでしょう。
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