不動産共有分割

1 不動産の共有とは

「共有」とは,1つの物を複数人が所有する「共同所有」の形態の一つで,民法249条以下に定められています。

したがって,不動産の共有とは,1つの不動産を複数人で所有していることを意味しています。

2 共有になるケース

共有になるケースについては,大きく2つに分けられます。1つ目は,当事者の意思による場合,2つ目は法律による場合です。

(1)当事者の意思による場合

例えば

・夫婦がマイホームを購入する際に,持分を各自2分の1ずつの共有とすることを合意したような場合

・相続財産である不動産について遺産分割協議により,複数の相続人で共有とすることを合意したような場合              など

(2)法律による場合

   例えば

・「夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は,その共有に属するものと推定する」(民法762条2項)

・「境界線上に設けた境界標,囲障,障壁,溝及び堀は,相隣者の共有に属するものと推定する」(民法229条)             など

3 共有持分とは

共有がどういった状態かといいますと,例えば,ある住宅に対する所有権を割合で持ち合うといったイメージです。住宅の1階部分をAさんが,2階部分をBさんが所有するということではありません。この,共有者がそれぞれ持つ割合のことを,「共有持分」といい,基本的には当事者間の合意で自由に定めることができます。ですから,例えば夫婦でマイホームを購入する際に,夫と妻の割合を2分の1として合意することも,夫の割合を4分の3,妻の割合を4分の1として合意することも可能です。

4 共有名義にする場合の注意点

共有は,単独所有の場合と異なり,自分の他にも同じように不動産に対して権利を持っている人がいることから,その権利の行使に当たっては一定の制約が課されていますので注意が必要です。

その制約については,以下のとおりで定められています。

・「管理」・・・各共有者の持分の価格に従い,その過半数で決する。

例)第三者と締結していた不動産の賃貸借契約を解除する場合

・ 「変更」・・・共有者全員の合意が必要。

   例)不動産の賃貸借契約を締結する場合など

・ 「処分」・・・共有者全員の合意が必要。

   例)不動産を売却する場合など

なお,唯一共有者が単独で権利を行使できる場合があり,それは不動産の現状を維持するための行為(これを「保存行為」といいます。)がそれに当たります。

5 共有状態を解消する方法

共有は上記のように権利を行使するうえで一定の制約が課されていますので,共有者間のトラブルが生じやすくなっています。

そこで,民法は「各共有者は,いつでも共有物の分割を請求することができる」と定め(民法256条1項),共有状態の解消方法を設けております。

では,具体的にどういった形で共有物を分割するのかといいますと,3つの方法が挙げられます。現物分割,換価分割,そして代償分割です。

(1)現物分割

現物分割とは,共有物を持分の割合に応じて物理的に分割して,各共有者の単独所有にする分割方法です。例えば,一筆の土地を共有している場合に,持分の割合に応じて分筆して,それぞれ分筆した土地の単独所有者になるといったことです。

ですが,戸建ての住宅や分譲マンションの一室など,物理的に分割が不可能な不動産もありますし,分割したことによりその不動産の価値が大幅に減少してしまうなどといった問題があり,あまりこの方法が採られることはありません。

(2)換価分割

 換価分割とは,共有物を売却して,その代金を各共有者の持分の割合に応じて分配する分割方法です。

換価分割は,さらに,共有者間の話し合いにより共同売却の合意をする場合と競売による分割(民法258条2項)の方法があります。競売になると,不動産業者を介して売却するなどよりも価格が廉価になるのが通常ですので,なるべく他の分割方法を採ることが望ましいです。

(3)代償分割

代償分割とは,共有物を特定の共有者の単独所有とした上で,この共有者から他の共有者に対して持分に応じた価格を支払わせるという分割方法です。

下関 083-234-1436 黒崎 093-482-5536
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