調停中に土地の分筆が行われ,遺産分割調停が成立した事例
1.事案の概要
依頼者は,約10年前に亡くなった母親(被相続人)より、公正証書遺言で遺産の全てを相続しました。遺産のほとんどは不動産で,山林,畑,原野や,築50年を経過した実家建物などでそれほど価値のあるものはありませんでしたが,唯一,実家建物の敷地の一部(以下「本件土地」という。)は広大であったことから、固定資産評価上は高い価値を有する土地でした。
その後、依頼者は、公正証書の存在を知った兄弟より、遺留分減殺請求調停を申し立てられました。兄や弟は、自分達には各1/6の遺留分があることから、遺産の1/6に相当する金銭の支払いを要求していました。
しかし、実際には本件土地を売却して換価することは困難な事情がありました。また、遺留分減殺請求権の行使によって、依頼者・兄・弟が土地を共有したままとなっても、本件土地の将来の管理や後の相続によって更なる紛争の火種となる可能性もあります。また別の視点から見れば、実際に土地の共有を避けるために一方当事者が本件土地を取得すれば、他方に対し、代わりに代償金を支払わないといけないような状況にありました。
依頼者は,当初ご自身で調停の対応を行っていました。しかし、半年以上経ても調停がまとまらず、審判に移行したことから、ラグーンへ来所されました。
2.事件処理
⑴ ラグーンでは,まず,兄や弟の請求が遺留分減殺請求であることから,相手方が求める金銭の支払いには応じられない旨を明確にしました。
そして,逆に依頼者が被相続人の生前から行ってきた財産管理について、管理内容や時期,要した費用などを整理して主張することで、兄や弟から一定の解決金を支払うことを前提に審判を進めていきました。
その結果、依頼者が財産管理によって約10年もの間、自ら費用を支出して土地を管理していたという裁判官の心証を得ることができました。
⑵ 審判が少しずつ前進していくと、依頼者は,母親が居住していた実家建物を確保したいという意向を有するようになっていました。しかしながら,依頼者の意向を重視すれば,実家建物とともに本件土地を取得する必要があり、その代わりに兄や弟に対して代償金を支払う必要が生じることになります。
そこで,ラグーンでは,審判を再度調停に移行し、兄・弟・依頼者の合意によって本件の解決を図りました。
まず、早期に解決させることのメリットが兄・弟・依頼者三者にあるという十分な説明を行いました。そして、本件土地の共有によって後に生じ得るトラブルを防ぐ必要性があることを挙げ,本件土地を分筆して、それぞれ取得し合うことを提案しました。
⑶ それまでは兄と弟は金銭を取得することにこだわっていましたが、分筆によって解決する合理性や、審判を続けて本件土地を共有し続けるデメリットを説明することで、調停の中で依頼者・兄・弟の三者で分筆をすることの合意を取り付けました。
⑷ 以上のように、結果として、依頼者は本件土地を分筆し、実家建物やその敷地を取得するのみならず、兄と弟から一定の解決金の支払いを受けるという内容の遺産分割調停が成立しました。
3.最後に
令和元年6月30日までに発生した相続について、ご自身の遺留分を侵害する遺贈や贈与等があった場合には、「遺留分減殺請求」をすることができます。「遺留分侵害額請求(令和元年7月1日施行)」とは異なり、あくまでも「遺留分が侵害された限度で、遺贈・贈与された財産の返還を求める」ことができます。
遺留分減殺請求をしてきた相手方が、財産の返還ではなく「金銭の支払い」を求めて来た場合には、原則として「財産の返還を求めることができる権利」でしかないことを理解してもらうことが重要です。
最終的に、財産の返還や金銭の支払のいずれで解決するかは、相手方との交渉や調停等の手続によって様々です。しかし、往々にして、相手方の要求に応じ難い要素があることは否めません。
遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)をされた、またはこれから遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)をしようという方は、是非一度、当事務所までご相談ください。
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