財産調査のうえ遺留分侵害額請求をし、交渉のうえ裁判外で合意成立となった事案
1.事案の概要
被相続人である父は、すべての遺産を妻に相続させるという内容の遺言を残して亡くなりました。被相続人には、法定相続人として、妻(1/2)、子3名(各1/6)の合計4名がいました。
このうち2名の子は、数年前から父母とは疎遠な関係にあったとはいえ、これまでの関係性を踏まえると、遺言内容に納得ができず、またインターネットで遺留分の制度があることを知り、弁護士に手続きを依頼することになりました。
2.事件処理
遺留分侵害額請求の通知をする前に、まずは被相続人の預貯金関係等を中心に遺産調査を始めました。その結果、一定額の預金があることが分かりましたので、被相続人の妻(母)に対して、遺留分侵害額請求の内容証明郵便を送りました。また、これと併行して、銀行の取引履歴のなかに保険料、共済金等の支払があったことから、保険・共済に対して契約内容の照会をしました。
保険関係の回答がある前に、被相続人の妻から連絡がありました。当初は支払をしたくない、というスタンスでしたが、粘り強く遺留分侵害額請求の趣旨等を説明したところ、最終的には支払をすることで了解が得られました。
そのため、遺産の範囲を妻からヒアリングすることになりました。概ね当方が調査していた内容と一致する財産が開示されましたが、意図的なものか不明であるものの、当方が調査していた保険・共済については存在しないものとして開示がされませんでした。
その後、保険・共済に対する照会結果が戻ってきましたので、内容を確認して検討したところ、この保険金・共済金のなかには受取人が被相続人のままになっているものもあり、また建物更生共済(満期返戻金があり資産性が認められるもの)も含まれていることが分かりました。法律的には、これらも遺産に含まれますので、当方から妻に対してその存在を指摘して、これも含めた遺留分侵害額の支払を求めたところ、妻側も了解したため、裁判手続外で早期の合意となりました。
3.結果等
遺留分制度については相続法の改正によって、従来の遺留分減殺請求から、遺留分侵害額請求という名称に変更されました。大きな変更点として、これまでは預貯金以外の財産があるときに(例えば不動産等)、遺留分を主張すると、共有状態となり、紛争が長期化しやすい傾向にありました。これが、法改正によって、金銭に換算して請求することができるようになったことから、「侵害額」の請求として、必ずしも共有状態となることなく解決ができるようになり、権利として活用しやすくなったのが特徴的です。
今回のケースのように、権利があっても、その権利行使に対して事実上抵抗されたり、あるいは遺産を(意図的であるかはさておき)隠されたりして、必ずしもスムーズにいくとはかぎりませんが、専門家に依頼することで、確実に権利行使ができ、資産調査の精度も高まりますので、結果として正当な権利を確保でき、かつ紛争が不必要に長期化することを避けることができます。遺留分侵害額請求に関してお困りのことがあれば弁護士に相談されることをお勧めします。
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