財産の使い込みで困っている
親と同居していた相続人の一人が親の財産を使い込んでしまって,相続財産が一円も残っていないことが親の死後,調査を行って初めて分かった。疎遠だった弟から,母の財産の使い込みを疑われて,精神的に参っている。
このようなご相談は,毎年増加している感覚です。
財産の使い込みが問題となるポイント
財産の使い込みが問題となるポイントはいくつかあります。
被相続人が使用していた金融機関の取引履歴10年分を取得する
まず,被相続人が使用していた金融機関の取引履歴10年分を取得すること
そして,不自然なお金の流れ(例えば,相続人の一人に振り込みがあるとか,多額の出金が短期間に何度も繰り返されていないかどうかなど)がないか確認すること
被相続人の判断能力を調査する
次に,被相続人の判断能力を調査する必要があります。
具体的には,被相続人が入院もしくは通院していた医療機関の医療記録,要介護認定の資料などを取得すること,特に長谷川式認知症スケールを行っている場合には,その点数,看護記録中の被相続人の様子,発言などに着目する。
被相続人の財産を管理していたのは誰かを確認する
最後に,被相続人の財産を管理していたのは誰かが問題となる。
同居していたのは誰か。通帳やカードを管理していたのは誰か。預金の払戻し請求書を記載しているのは誰か。入院中にお金が引き出されていないか。そのお金を出したのは誰か。被相続人の口座から相続人の口座に直接お金が振り込まれていないかなどをチェックすることがポイントとなる。
これらの調査の結果,被相続人が判断能力(財産管理能力)を喪失しているにもかかわらず,相続人の一人によって多額の出金が行われていることが分かった場合には,その他の相続人は,相続人の一人に対して,不法行為に基づく損害賠償請求権,もしくは,不当利得返還請求権を取得することになります。相続人の同意があれば,遺産分割調停の中で取り扱うことも可能です。
この場合,相続人の一人は,使途について,領収書などの客観的資料に基づいて,合理的な説明ができない限り,その他の相続人からの請求が認められる可能性が高くなります。