遺留分侵害額(減殺)請求の仕方
亡くなった方が生前に特定の相続人にとって不公平な遺言を書いていたり、遺贈・贈与をしていたりすることで不利益を受ける相続人は、遺留分(法律で保護されている最低限の割合によって遺産を受けとる権利)を回復するために、遺留分侵害額請求権を行使できる場合があります。ここでは、遺留分侵害額請求の仕方について説明します。なお、改正法の適用前(2019年6月以前)に生じた相続については、遺留分「減殺」請求権とされていました。請求をする際の注意点については、法改正前後で大きな変更はありません。
遺留分の権利者
まず、遺留分の権利がある相続人は、兄弟姉妹以外の相続人です。一般的なのは、配偶者・子・両親です。孫や祖父母が相続人になるというケースではこれらの人たちも遺留分の権利者です。
遺留分侵害額請求の仕方
遺留分侵害額の請求をするためには、遺留分を侵害している(要するにたくさん遺産を受けとっている)相手方に対して、その旨の意思表示をする必要があります。
意思表示をする方法にきまりはありません。口頭、電話、メール、手紙等、どのような方法でも可能です。裁判を起こす必要もありません。しかし、後で「言った言わない」の争いになると困ります。そのため、証拠が残るように、配達証明付きの内容証明郵便で「私は遺留分侵害額請求権を行使します」と明記した手紙を郵送する方法が良いでしょう。遺産の内容に争いがなければ「〇〇円を請求します。」としても良いと思いますし、遺産の内容に争いがあるか、そもそも遺産総額が不明である場合には「遺留分侵害額請求権を行使します。ついては金額を算定するために相続人の全財産を開示してください」と求める方法も選択肢の1つです。
請求の期限
遺留分侵害額の請求は、相続の開始及び遺留分が侵害されていることを知ったときから1年以内に行使しなければなりません。1年を経過すると時効で消滅してしまいます。また、遺留分が侵害されていることに気付いていない場合でも、相続開始(亡くなった日)から10年を経過した場合は同様に請求ができなくなりますので注意をしましょう。
遺留分侵害額の請求をしてもまとまらないときは
遺留分侵害額の請求をしても、相手方に無視されたり、話し合いができても金額面で折り合いがつかなかったりするケースではどのようにすべきでしょうか。相手方が亡くなった方のすべての財産を開示してくれなかったり、不動産の評価額について折り合いがつかなかったりして交渉がまとまらないという事案が代表的です。
このような場合には、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所(当事者が同意すれば別の場所でも可能)に調停を申立てることになります。調停では、第三者的な立場にある家庭裁判所の調停委員に間に入ってもらい話し合いを進めることができます。通常は1か月に1回程度の頻度で話し合いを続けて調停の成立を目指します。
話し合いや調停をしても解決できない場合には、自分もしくは相手方の住所地を管轄する地方裁判所に訴えを提起することになります。
遺留分侵害額の請求については、行使の時期や方法に上記のような注意が必要です。また、遺留分の計算方法や相手が応じない場合の対応については、専門的な知識が必要となりますので、まずは弁護士にご相談ください。